某高校教務部の出した文章が素敵。

先日の朝日新聞に「新聞で学力!Try例題」という記事があった。河合塾の協力のもと、国語の例題が一問だけ掲載、早速やってみて驚く。これはどうなんだろう?と門外漢の私でも思わざるを得ない。ちょっと勘の良い生徒なら、5分もかからずに正解してしまうのでは? そもそもこれは現代文の問題として機能するのか? そんなことを感じた。


試行テストを見る限り、これは国語だけではない。数学もそう。ただただ「情報整理」を求められる感じ(これは私個人の感想)で、センター試験に比べて明らかに劣化している気がしてならない。一体、このような問題で受験者の何を見ようとしているのか。(「AIが人間の作った問題を解けないから、問題をAIに近づけたんじゃないか?」という冗談話もある)


そんな中、今日twitterで以下の文章を見かけた。(多分、東京都内の)某高校の教務部が生徒向けに出した会報での記事だとのこと。素晴らしいのでぜひお読み下さい。



いよいよ、というべきでしょうか。先述した通り、現行のセンター試験に代わる大学入学共通テストの実施が、再来年の令和三年度に迫りました。国語・数学には記述式問題が導入されます。さらに、英語では四技能(「読む」「聞く」「話す」「書く」)の評価のため、「広く実施され、一定の評価が定着している」民間の資格・検定試験を活用し、当面は共通テストと並存させる方針が明らかにされています。共通テストへの移行は高校学習指導要領の改訂時期に先立つため、実質的には先取りであるにもかかわらず、既卒受験生に対する移行措置はないと告知されています。また、公平性の担保や、実施内容の揺れ、大学側の不明確な活用方針など、多くの課題を抱えたまま実施されようとしています。


文科省によれば、このテストへの移行の背景には、「グローバル化」や「技術革新」と、それにともなう「社会構造」の変革と「予見の困難な時代」のなかで「新たな価値を創造することが求められる現状があります。この喫緊の課題に対応し、「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」、の三要素の育成・評価を重視し、具現化するのが共通テストというわけです。


このようなことを記すと、受験生の不安を煽るとは、と眉をひそめる向きもあるかもしれません。しかし、先の文科省の文言をあらためて読んでください。どこかで聞いたことのある陳腐な表現ではありませんか。教育学者の中村高康氏は、現代の「新しい能力」をめぐる論議は、既存の能力主義を批判する「ため」になされるものであり、新たな原理・代案など存在しないのに存在するかのように装うのだと喝破しています。先の三要素も、そもそもこれまで我々に必要とされてきた能力の一部に過ぎず、それをわざわざ大きく取り上げ「新しい能力」として鼓吹するものに他なりません。


すでに共通テストのプレテストが三回施行され、その内容が公開されています。たとえば国語では、複数の文章や図表などを情報として読み取り、それらを整理したり、意見を書かせたりする問題を確認できます。従来のセンター試験が最良のかたちとは思えませんが、表現の機微よりも縮減された「情報」に重きが置かれるため読み取りがたやすいこと、採点にブレが出ないように記述の方向性が決まっているのが見え見えであること、古文の表現を捉えずとも付属する別の文章から答えが導き出せてしまうことなど、共通テストにはいつの低下の方が目立ちます。国文学者の紅野謙介氏らからも批判的な意見が寄せられ、それにどう応えていくのか注視しているところです。


さて、これから受験を迎える在校生諸君には、「新しい能力」や「大学入学共通テスト」の幽霊にどうか惑わされないように願います。将来をしかと見据え、鍛え上げた能力を信じ、試験の実態を見極めて、堂々と大学入試に挑んでください。

網重塾

徳高生とともに大学入試に関わって40年 その知識と経験を伝える英語・数学専門塾 ・1クラスの定員は10人以下の少人数 ・板書を中心とする参加型授業 ・質問大歓迎! 授業中でもそれ以外でも ・高1は徳山高校の教科書・進度に合わせた授業